紫を着る男
Laus in amore moriar.
愛の中で死ぬことは誉れ。
―― プロペルティウス
少佐の誕生日は伯爵さまの思惑通り盛大に祝われた。朝起きるとまず伯爵からのハッピーバースデーの歌とキスの嵐が待っていた。彼は三角帽子を頭に乗せて、少佐にもかぶせた。少佐は新しいネクタイと最上級のエメラルドをあしらった美しいネクタイピン、パジャマ、煙草、ベンツとBMWの新型試乗会招待券、などを次々に渡された。それからベッドから出され、風呂場に投げこまれて、髭を剃り終えて出てきたと思ったら、廊下と階段にしかれた赤い絨毯の上を食堂まで歩かされ、使用人一同に拍手とクラッカーでもって迎えられた。食堂の壁には手書きのお誕生日おめでとうの文字が踊り、長いテーブルの上には栄光のドイツ軍歴代戦車の模型が一列に並んで待っていた。少佐は正直に云って、どうしたらいいかわからなかった。朝食の皿にはハートマークがついているし、伯爵はにこにこしながらずっと少佐を見つめているし、おまけに執事のヒンケルまでにこにこと上機嫌で、少佐はまったくやりきれなかった。誕生日なんぞどうしてあるのだろう、と昔から思っていたが、今年はほんとうにそう思った。伯爵が楽しそうなので、あからさまに態度には出せなかったけれど。
「誕生日のお願いをひとつきいてあげようかな」
朝食のあとで伯爵がそう切り出したとき、少佐は少し考え、すぐに願いごとを思いついた。
「なんでもいいか?」
少佐は確かめた。
「いいよ。君の誕生日だもの」
伯爵は微笑して応じた。
「……紫を着る男」
少佐が云うと、伯爵は瞬時身体を固くした。
「…………あまり乗り気がしないな」
伯爵はそう云うと顔を赤らめ、それから曇らせた。
「なんでだ?」
顔を赤らめる伯爵とは珍しかった。少佐は煙草に火をつけかけていた手を止めて、彼の顔をのぞきこんだ。
「なんでって……我を忘れちゃうからというか」
伯爵はまた赤くなった。少佐は笑った。
「なんでもきいてくれるんじゃないのか」
「そうだけど……」
「じゃおれの願いはそれだ。ほかはなし」
伯爵はもごもごとなにか云ったが、少佐は無視した。誕生日もなかなかいいものだ、と少佐は考えはじめていた。
美術品と伯爵との少し逸脱した関係には、割とすぐに気がついた。伯爵は美しいものをなにより愛した。それを所有して自分のそばに置くことを愛した。自分だけの空間で、見て、触れて、愛さなくては意味がない。伯爵はそう云っていた。彼はいわば、所有するすべての美術品と肉体的な関係を結んでいるようなものだ。現に彼は、お気に入りの一品を前にことにおよぶとき、異常な興奮を示す癖があった。
「もしかしたら、はじまりはジョルジョーネだったかもしれない。彼の絵を手に入れるために、十四歳のいたいけな坊やがなにをしたか話したよね? あのとき、わたしはずっと絵を見てた。わたしが絵を見ると、まるで絵の中の青年のほうも、わたしの狂態を見ているような気がした。夢見るような美しい顔で。そりゃあ興奮したよ。相手の男は、それが自分の腕前のためだと思っていい気になっていたけどね。絵と感じ方の関係に気づいたのはもう少しあと。そのあいだに、わたしはいくつかの彫刻と寝るということをして……(少佐がよほど妙な顔をしていたのだろう、伯爵はそのとき笑って、少佐にすり寄ってきたのだった)……そしてはっきり気がついたんだ、ああ、これがわたしの性癖なんだなって。でもそのことは、ひとりだけの秘密にしていた。わたしと、わたしの愛する絵や彫刻との秘密の関係を、ばらしたくなんかなかったからね。わたしはいまでも、盗んだものを持ち帰ってじっくり見るときには、ひとりきりで、夜、できるだけ明かりを落として向き合うんだ。思うに、鑑賞することは、多少なりと性的な行動なんだよ。読書も音楽も骨董趣味も、サボテンも熱帯魚もみんな。それは形だとか色だとかに対する、そこから連想され浮かぶものに対する偏愛で、女の身体に興奮するとか、男の身体に興奮するとかいうのとおんなじなんだ。わたしはちょっとそれが強いだけ。だから、たとえば一枚の絵を暗がりで見ているだけで、身体が反応するしオルガスムスに達しちゃう。きっと普通とかいわれてる連中は、その反応が対異性の身体に限定されているんだろうね。そんな人生つまらないんだろうなって、わたしは思うけれど」
伯爵はそう語った。この城の展示室で、お気に入りの「紫を着る男」を目の前にして。少佐はそのとき、伯爵を探していた。たぶんここだろうと思ってドアを開いたとき、その絵を見つめていた伯爵が驚いたように振り返って、少佐を見つけて顔を赤らめたところから話がはじまった。少佐は逃げるように部屋を出ようとする伯爵をつかまえた。そうして、彼の身体になにが起きているのかを理解した。少佐はたぶん、無意識に押さえておかねばならないと思ったのだろう。彼の興奮の出どころを、彼にその手の反応を引き起こしたものを。問いつめると、白状する前に、伯爵は少佐を求めた。それで少佐はその場で彼を抱いた。伯爵は気を失うほどのめりこんだ。異常な感じ方だった……伯爵が失神したなどということは、そのときだけだった……彼の視線がときおりあの絵に向けられるのに気がついて、少佐は理解した。そして、どう反応したらいいのかわからなかった。
「別に理解しようとしてくれなくたっていいよ」
伯爵は優しい微笑を浮かべて云った。
「ただ、そういうやつなんだなって思ってくれたらいい」
少佐はそうした。時間がたつにつれて、そしてそれにしたがってあらゆるタブーが解除されてゆく中で、少佐はしだいに彼のこの癖が理解できるような気がしてきた。それで、ときどきあえて伯爵を絵や彫刻の中に置いて、いつもと違う反応を楽しむようになっていた。
伯爵は美術品に囲まれての行為を、基本的には拒まなかった、というより、本人も楽しんでいるふしがあった。でも「紫」だけは特別らしかった。伯爵はそれだけは頑なに拒否し続けた。「強烈すぎるから」というのが伯爵の云いぶんで、さてしかしなにがどう強烈すぎるのかは云ってくれなかった。云われてもわからないかもしれないと少佐は思った。でもあの強烈な反応の原因を、知りたいとは思っていた。少佐のご先祖である、遠い昔の英国海軍将校……どうもエーベルバッハ一族は、英国と妙に縁がある……スペイン人との混血である黒髪の男の、短く劇的な生涯。あの絵に魅せられて、あの男の研究に没頭する人間が、昔から絶えることがないそうだ。少佐にはわからない。あの絵のなにが、いったいそんなに魅力的であるのか。あの男のなにが、ひとを惹きつけるのか。あの絵のなにが、伯爵の中で特別であるのか。
伯爵の好きな作品には、一応の敬意を払わなければならないから、少佐は伯爵をソファに座らせて、目の前に作品を置いて、鑑賞に支障が出ない程度にできるだけ明かりを落とし、自分も伯爵のとなりへ腰を下ろしてから、いつもこう切り出すことにしている。
「これはいったいどういう絵なんだ? 手に入れようと思ったきっかけは? これの魅力はいったいなんだ? 芸術オンチにわかるように説明してくれ」
伯爵はそうするとはにかんだように微笑して、少し考えてから、話しはじめるのだ。でもこの日は、伯爵はしばらくのあいだ惚けたように紫を着る男を見つめていた。
「……この絵に関しては特に、客観的になれないんだ。だからすごく下手な説明になると思うけど許して欲しいな」
伯爵はちょっと困ったような顔をした。少佐は伯爵の前の小さなグラスに甘口のシェリーをついでやった。テーブルの上には、グラスとシェリーの瓶、蝋燭が三本乗った燭台と、小さな花瓶が置かれていた。
「わたしがこの絵のことをはじめて知ったのは、過去に開催された美術展のカタログを見ていたとき。イギリスの肖像画の歴史に焦点を当てた、ちょっとマニアックなものだった。ぱらぱらページをめくっていて、この絵が目に飛びこんできたとき、わたし、しばらく打たれたようになって動けなかったな。君、あの絵を見て。あんな青黒い暗い背景に、彼はおそろしく鮮やかに浮いている。身分のある人間らしい、豪奢な紫の服。冒涜的なくらい真っ赤な帽子、その上に乗った、からかうように軽い羽根飾り。あの異端的な長い黒髪、そしてあの目……」
伯爵の身体がかすかに震えた。
「一見、甘いマスクのいい男。右手に持った剣が飾りかと思うくらい。なんて美しい男だろう。一瞬、その美しさに見とれる。でも、それは間違いだとすぐにわかる。あの切れ長の目、決してこちらを見ないあの目が、途方もなく深くておそろしいことに気がついてしまうから。そしてその瞬間に、この絵の持つ不気味な、ほとんど悪魔的と云ってもいいな、そういう魅力に気がつくんだ。第一印象の美しさゆえに生じたうっとりした気分は、心臓を鷲掴みにされるような恐怖の混じった興味に変わる。あの引き締まった薄い唇……あれは、ほんとうのことなんて云いそうにない唇だよ。彼の本音は誰にもわからない。彼がなにを考えているのか、誰も知らない。誰も、彼の心の底を見ることはできないんだ。だってその美しい外見が、薄気味の悪いものをみんな包みこんでしまっている……このモデルの男のことは知っている?」
「ああ……十六世紀のイギリスの海軍将校。スペインと内通していた反逆者だ」
テーブルに置かれた蝋燭の炎が、ゆらゆらとあやしげに揺れた。
「なかなかスマートな軍人だったらしいな。四百年も前とはいえ、二十代で大佐とは恐れ入る。おれなんざ、まだ少佐あたりでヒーヒー云っとるのに」
伯爵が小さく笑って、少佐の肩にもたれてきた。
「表の顔は女王陛下の忠実な僕。裏の顔は半分の故郷スペインに焦がれる反逆者。彼のいったいなにが、彼を駆り立てていたんだろうね? いったいどんな感情が、彼の中に渦巻いていたんだろう? この美しい顔には、この世ならぬものが宿っているように思える。途方もない偉業を、ただただうちから沸き起こる情熱から成し遂げた連中と同じもの。わたしはそういうのが好きだよ。自分のきょうだいのように思えるよ。それはたぶん、わたしが美しいものに対して持っているものと同じだ。わたしはありとあらゆる美しいものを自分の手元に置いておきたいと思ってる。どんな手段をとったって、良心の呵責なんて感じない。わたしが欲しいんだもの、わたしのものだ。わたしが欲しいと思うなら、それはわたしのものになる権利があるんだ。わたしはそれを、所有されるものにとっても名誉だろうとすら思ってる。そうじゃない? わたしなら、彼らを愛せる。わたしなら、ふさわしい主人になれる。美しいものに見合うだけの、理解ある、そして美しい主人になれる。健全な肉体と健全な魂のように、美しいものと美しいものは呼びあうのさ。この世で一番美しいのはわたし。だから、わたしはあらゆる美しいものを手にする権利がある。この紫を着る男を動かしていたのも、同じ情熱だったと信じる。わたしには彼がわかる」
伯爵の顔に、興奮の異様な光が射していた。彼の目は深く、研ぎすまされてじっとあの絵に注がれている。どこかこわばったような表情で、唇をかすかに開いて、食い入るように、あの絵を見ている。蝋燭の淡く暗い明かりが、その顔を舐めては横切り、また照らし出した。恐ろしい顔だった。そして信じられないほど美しい顔だった。少佐は伯爵の身体が高ぶっているのを感じた。熱を帯び、緊張して、ほとんど官能的な高まりに達しつつあるのを感じた。少佐の胸に、恐怖に似たものと歓喜とが、ほとんど同時に押し寄せてきた。……ああ。少佐は伯爵の顔を見つめながら、自身もまた打ち震えるのを感じる。おれはようやくつかんだような気がする。この美しい金の巻き毛に包まれた頭の中を、白い肌に覆われた胸のうちを、このしなやかな、美しい身体をつき動かしているものを。めまいに似たものを感じ、少佐は目を閉じる。そうして巻き毛に頬を寄せる。彼の持つ底なしの欲望に、飲みこまれ、食い殺されたいような気がした。それにまみれ、おぼれ死んでしまいたいような気がした。そしてこの世界で自分だけが、それに値する、それに耐えうる資格を与えられているような気がした。
伯爵がふいに少佐を見上げてきた。そこからあの異様な光はもう消えていて、慈愛に満ちた、清らかな面立ちが満ちていた。少佐は見とれた。伯爵が少佐の頬を両手で包んだ。確かめるようにあちこちに視線をさまよわせ、伯爵はしまいに極まったように目を閉じて、少佐の額に自分の額を押し当てた。
「……そして彼は、君に似ているんだ」
……少佐は唇を持ち上げ、伯爵と同じように、目を閉じた。
伯爵は少佐の上に座って、彼にもたれ、もうほとんど体重を預けていた。ソファは紫を着る男に向かって置かれていたために、伯爵はその絵とまともに向かい合っている。少佐は高ぶっている彼の身体を容赦なく検分した。今日こそは、どんな手厳しい追求も許されているはずだった。今日こそは、なにもかもがつまびらかにされ、なにもかもが見通せなくてはならなかった。少佐には、伯爵の反応が手に取るようにわかった。そして伯爵も、少佐が求めるものを寸分違わず与えてよこした。
あの男は、おまえを見ているかと少佐は訊ねた。伯爵の中が一瞬反応を示した。きっと見てる、と伯爵は云った。君と、同じ目をして。
少佐は満足だった。同じ満足を、伯爵にも与えてやりたかった。彼を喜ばせてやりたかった。それで少佐は動きを止め、伯爵を抱きしめて肩や首や背中に口づけた。伯爵が満足そうに、甘えた、鼻に抜ける声を漏らした。
「おまえ、あの絵がまだ欲しいか」
伯爵の顎をつかみ、自分の方へ引き寄せて、少佐は訊ねた。ん? と云って、唇にキスした。伯爵は息をもらして笑った。
「うん、欲しいよ。ほんとは、まだ、あきらめてない」
伯爵は腕を回して少佐の髪をなでた。少佐は微笑し、少し身体を起こして、伯爵をゆっくりソファに押し倒した。伯爵が少しうめいた。それから息を吐き出した。金の巻き毛がソファから垂れ下がった。少佐は続きを再開した。伯爵は少佐の腕に片手を置き、もう片方の手を無意識に唇のところへ持っていって、押し当てた。
「……おまえにやる」
少佐がふいに云うと、伯爵がうるんだ目を開いた。少佐は彼を見下ろした。
「この部屋にあるもの全部だ。うちのご先祖が長年かけて集めてきたもの全部。おまえ、あのきんきらの聖杯が欲しいだろ。象牙の聖母子像も、古いマイセンも、おまえがいま見ているものは全部。それからお気に入りの紫を着る男」
少佐は目を白黒させている伯爵の顎をつかみ、絵に顔を向けさせた。
「あれが欲しいか」
耳の中へ吹きこむと、伯爵の全身がふるえた。彼の頬が、見る間に赤く染まった。
「……欲しい……欲しいよ……ああ……」
伯爵はふるえてため息をもらした。彼の内側もそれに従って収縮した。少佐は一瞬顔をゆがめ、そして満足げに唇を持ち上げた。伯爵の顔を自分へ向けなおして、ふたたび口を開いた。
「おまえにやる。遺言書を書き換えた。だから自分のものにしたくなったら云え。親父が生きてりゃ、おれが殺して、それから死んでやる。それであの絵はおまえのものだ」
伯爵が目を見開いた。少佐は満足だった。伯爵があの絵とエーベルバッハ少佐とを天秤にかけたなら、どちらへ傾くのだろう? 少佐にはわからなかった。もしかしたら、あの絵の男が勝つかもしれない。だがそれがなんだろう? 自分が、伯爵にあの絵を与えるのだ。喉から手が出るほど欲しくて、いまだに手に入れられないあの絵を。獲物を見つけたときの彼はほんとうに美しい。ぎらつく目をして、興奮に頬を赤らめて、夢中になって食い入るようになにかを見つめる彼は。そして「わたしのもの」と云うときの彼は。わたしのもの……彼のもの。彼に所属するものに栄光あれ。彼の自分勝手な、強烈な欲望の配下に置かれたものに祝福を。それは彼をかき立て、かき乱し、喜ばせる。彼の興奮、彼の快楽。それを与えるもののすべてに祝福あれ。そして彼自身は、いつも満たされてあれ。あらゆる美しいもので。あの「紫」は、少佐の唯一の切り札だ。少佐には伯爵の望む美術品も服も宝石も、なにひとつ与えられないが、たったひとつ、あの「紫」だけは与えてやることができる。彼が泣くほど欲しがって、手に入れられなかったおそらく唯一のものである、あの「紫」を。
「わたしのものに……あの絵が……わたしの……」
伯爵は身体の内も外もふるえていた。全身をふるわせて、ほとんど感極まっていた。
「嬉しいか?」
少佐はそっと訊ねた。伯爵はうっとりと目を閉じて、うなずいた。閉じられたまぶたのあいだから、涙があふれて流れ出た。少佐は目を細めた。
「ならいい」
少佐は彼の頬を伝う涙をぬぐった。
「あの絵が欲しいんだ」
甘ったるくねだるときの顔で伯爵が云った。少佐の首に腕を回して、少し首をかしげて。
「ねえクラウス、欲しいんだよ」
さらにねだられて、少佐は目をしばたいた。
「……どうしてもか?」
伯爵はうなずいた。
「だって、もう我慢できなくなったんだ。いますぐに欲しいんだよ」
少佐は目をつぶり、少しのあいだ考える。でも次の瞬間にはもう、伯爵に向かって微笑している。
「わかった」
伯爵の顔が喜びで輝いた。
そしてその次には、少佐は床に倒れた父親を見ている。その次には、少佐自身が床に倒れている。彼の低い視界に、伯爵の脚が見える。こちらにやってくる。重たい首をなんとか持ち上げると、伯爵はあの「紫を着る男」を抱きしめて、少佐を見下ろしている。
「見て。わたしのものになったんだ」
伯爵の顔は上気し、ほころんで、美しかった。
「夢みたいだよ……ありがとう、クラウス」
伯爵はうっとりと目を閉じ、絵に頬ずりをする。……ああ。少佐は思わず微笑む。おまえ、嬉しそうだな。それでいいんだ。それでいい。…………
…………悪くない夢だ、と少佐は考えた。まだ明け方だった。となりでは伯爵が静かな寝息をたてていた。少佐は満ち足りた気持ちだった。自分がすべてを持っているのだというような、そういう気持ちがしていた。