少佐お誕生日おめでとうございます2015

 

 この話はそれぞれ個々別々に成立したものです。ドイツ語のお勉強のために、愛するシュトルムの原文を読んでいたとき、あの魅力的な一文に出合ったのでした。こんな文章あったっけ? と思って文庫版を見返したらたしかにあって、そうかこんな美しく詩的な表現の仕方があったのか……と思ったところから一番最後の話ができて、それからまたぜんぜん別に追いかけっこの話を思いついて、「紫」もぜんぜん別のことがきっかけで思いついた話ですが、ばらばらにできたものを並べてみるとどうもつながったひとつのもののように思われてきて、結局ひとつにまとめることにしました。車の鍵の話だけは、まとめようと決めたときに息抜きに書いたものです。まじめなのが続くと疲れるので。
 原作ではどう見ても伯爵が一方的に少佐を愛してるんですけれども、ふたり並べて関係性の構築という無体なことをしていると、どうもより深みにはまってゆくのは少佐ではないかという気がずっとしています。部分的には少佐のほうが、より情が深いというか。伯爵は懐が深く、少佐は感情が激しい。
 見ることあるいは見られることについて、もしくはほんとうに楽しむこととはなにか、ほんとうのエロティシズムはどこにあるのか、倒錯とはなにか、陶酔とはなにか、欲とはなにか。そういうことについての、これはひとつのあり方です。ひとつの美しい、閉じられ守られた楽園の幻想です。身体と心とのあくまで両方において、ここまで理解しあうには、お互いの気質根気教養文化程度そのほか、あらゆるものが試されることになるでしょうが、わたしの少佐は魔弾の射手ならびにZあたりの少佐のいいとこどりなのですから、きっとなんとかなるはずだ。
 少佐お誕生日おめでとう。トーヘンボク無神経なあなたも大好きですエヘヘ。。。

 

 | 目次

 

close