これがたぶん正真正銘の第一作である気がする

 

 お読みいただきありがとうございます。たぶん、これがほんとのエロイカフィク一本目です。これより前のは全部、習作でした。
 だいたい全部わかるように書いたつもりです、少佐のことも、伯爵のことも。少佐のことはまだちょっとつまってませんが、でもある程度、わかるんじゃないかな? こういう少佐が好き。ビジュアルは魔弾の射手のときあたりでね、こう、渋いんですね。懐が深いというか。少佐は少佐なりに、きっととても官能的なひとなんです。ほんとはね。それを、表に出さないけど。
 そして伯爵です。書いてて思った。わたし伯爵が好きだ(笑)原作の彼は、どこにも暗い蔭のないひとだけれど、わたしはそれを、超えたのがあの伯爵だと思ってる。ものすごい苦悩してきたひとだと思う。だいたい、葛藤して苦悩するのだ、アウトサイダーというそれだけで、もうその苦悩は果てしない。彼は誰も歩いて来なかった道を歩いている。自分だけの道を歩いている。それは、とても苦しいことだ。理解者を得るまで、ほとんど地獄と同じだ。絶望し、傷つき、もうだめだ、と思ったとき、それはあらわれる。そして、そこから一気に引き返すのだ、幸福の中へ。
 伯爵は、芸術家ではないけど、その魂を持ったひとだと思う。苦しかったと思う。わかってもらえなかったと思う。でも、彼はそれを超えて、微笑んでいる。彼の笑顔があんなにきらきらしてるのは、ものすごい戦いを終えた、この世界ではほとんど死に近づいた者の、輝きを持つからだ。わたしはそう思ってる。そして、それに魅せられてしまうのだ。きっと少佐もそうだ、とかもにょもにょ思っていたりする。
 これ、かけてよかったなあ。書き手としても、書けてよかったと思う作品です。短いけど、つまってる感じ。しばらくしたらもう粗が見えてきて、ああんいやん、ってなると思うけど……。
 冒頭のリルケの詩は、わたしが愛について考えるとき、いつも真っ先に思うことをとても端的に示してくれています。あの詩が難解だ、とか云うひとには、云わせておけばいい。彼はなにもかもを、わかるように書いている。詩と世界とを思考する者、あるいはそれを体験するものには、ドゥイノの悲歌は、うちなることばのように響く。

 

 こんなふたりです。よかったら、どうぞよろしく。

 

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