翻訳ってまことに難しいものですね。
第174歌は恋の歌でありまして、美しい恋人を焦がれてやまないこの歌は、こんな陽気な調子だと思うのです。「わたしの恋人」というテーマの歌です。どこかで「来なば焦がれて死のうものを」という調子の訳になっているのを見ましたが、あれは訳者の方がたぶんそういう雰囲気を狙ったのであって、同じ原典でも訳し方によって、ランボーの一人称をおれと訳すかぼくと訳すかくらいの結構な違いがあるのですね。
この上なく陽気に、日本語なりにリズム感をもって読めるようにしようと努力してみましたが、いかがなものでございましょう。多少文法上の正確さを犠牲にするのも、わたしはやむを得ないと思う方です。翻訳は一種の濾過であり、そして詩というのはとりわけ翻訳泣かせのものだとは思うけれど、究極には伝わるものが伝われば、それでいいのかもしれないと思います。堀口大学さんがアポリネールの翻訳ですごいことをやっていましたが、エッセンスの抽出、というものがこなせていれば、もう万々歳であるかとも思います。
カルミナには楽しい恋の歌がたくさんあります。かわいらしいものも、悲壮感漂うものも、たくさんの歌があります。昔から、恋にともなう感情がやたらめったらめまぐるしいのは変わらないと、こういうことですね(笑)
ちなみにカルミナの原文はこちらのページ→ですべて読むことができます。今回訳したのはラテン語の部分のみです。続く174aは字面からしてたぶん中高ドイツ語にあたると思われますが、このことばについてはなにも知らないので(笑)訳せませんでした。ヒリアヒリエの部分ですが、おそらくなんらかのことば遊びであろうと思われます……が、勉強不足ゆえ、うまい訳し方がわかりませんでした。日本語の全訳もあるんですけどね。筑摩書房から1991年に出たようですが、もう絶版になっているみたいです。いつか中古で買いたいなあと思います。
にしても、この歌を片翼の天使に使ったというのはこれいったいどういう了見なんだろうかね。。その点について問いつめたいですね。やっぱりセフィロスさん、あのイカゲソみたいな状態でもクラウドさんに「ハニーやーい」とか呼びかけてたんですかね。ちょっときもいですね。
以下、この詩のラテン語です。ご参考までに。
Veni, veni, venias,
ne me mori facias!
hyria hyrie
nazaza trillirivos!
Pulchra tibi facies,
oculorum acies,
capiliorum series -
o quam clara species!
Rosa rubicundior,
lilio candidior,
omnibus formosior,
semper in te glorior!