例の曲のラテン語歌詞について。
「再臨:片翼の天使」の歌詞を見ました(やっとか)。ラテン語ですが、ちょっとすごいことに気がついてしまったので、セフィクラ的にどうしても書かずにいられないので書きます。既出だったらすみませんが、ちょっと興奮しているもので。すごいよ! すごいよS社! 本気だよ!
なにを隠そう学生時代、ラテン語とギリシア語を両方やりました。どっちも同じ先生で、いいテキストがないという理由で、英語のテキストで勉強するというおまけつきでしたが、とても面白い授業でした。ラテン語はほんとうに楽しかった。ほんとうに、楽しかった。活用暗記地獄で血の汗を流しました。ギリシア語は、最終的には生徒が四人しかいなくなって(想像を絶するくらいめんどくさい言語なせい、でもアイスランド語はそれより難しいらしい、いつかやるべし)、毎授業何度も何度も黒板にギリシア文字をうねうねと書いてました。
というわけで、あの曲の、あの歌詞について。ACで使用されている、『再臨:片翼の天使』の、非常に問題のある一行についてです。
veni mi fili ……来よ、愛しの人よ
これについて、ちょっとどうしても書きたいことがあるので、書いておきます。おそろしく問題だぞこれは! これはすごいぞ! ちょっと心して聞いてください、セフィクラーなあなた。
まず、この一文は、三つの語から成り立っています。そんなことはわかってますよねごめんなさい。
左から順にいきますと、veniの原型はvenioという動詞です。読み方は、ウェニオーです。ヴェ、ではありません。ラテン語でvaとかveとか書くときは、発音はもれなくワとかウェとかです。virusをウィルスと読むのは正しいんです。venioの意味は、来るとか、まあそういう意味です。詳細はこんなところじゃ書ききれないので省きますが、veniというかたちは、venioの命令形です。来い、ってことです。
次。miについて。これは、所有形容詞男性形meusの呼格単数、です。意味不明だと思いますが、とりあえず「私の」という意味です。myです、my。この呼格というのはちょっと面白い格で、呼びかけるときに使用する専門のかたちです。おお、バラよ! とかやるときに使います。おお、神々よ、ムーサの女神たちよ、みたいな。日本語の感覚だとちょっとぎょっとするかもわかりませんが、ラテン語(ギリシア語もそう)では、固有名詞も格変化します。つまり、自分の名前も変わるんです。文章の中の機能によって。たしか記憶が正しければフィンランド語とかもそうだと思いますが、すみません話がそれました。
それに続くfiliも呼格単数。もとのかたちはfiliusです。これは、男性名詞です。もう一度云います。男性名詞です。先ほど書きました。miの原形が所有形容詞男性形meusである、と。何度でも云います、男性なんです。
さて、ではfiliusの意味はなにか? 正確を期するために、手元の羅和辞典を引きます。
■filius : 男性名詞 1むすこ 2(複数形で)子どもたち
研究社『羅和辞典』より
そうか、むすこ、か。つまりあれか、コピーのあいつを息子と認識しているのか。とか、ふんふん云ってみるものの、いまいち愛しいひと、のニュアンスがでない。この辞書には乗っていないけど、filiusにはもっとほかの意味もあります。このことばは、親しい目下の男性への呼びかけに使われるんです。
……ここまで書けば、おのずとおわかりでしょう。S社は、確信犯です。絶対に間違いありません。「再臨:片翼の天使」は、セフィロスのクラウドに向けてのラブコールです。絶対です。絶対に、間違いありません。誰の目をだませても、文法はうそつけません。meusの呼格miも、filiusの呼格filiも、活用としてはちょっと特殊な部類に入ります。注釈付きで覚えさせられるような特記事項です。おそらくラテン語翻訳を外部に頼んだのだと思いますが、「来よ、愛しの人よ」という日本語を見て、普通filiusは出てきません。これは、相手が年下の男性であることを明確に指定しなければ、出てこない単語です。
ちくしょうどんな指示を出したんだ! スタッフ出てこい! そして翻訳したひとはどんな顔でそれを受けたんだ! きかせろ!!
……だから、ですね、みなさま、セフィクラは、公式なんです。公式のカップルなんです。それをこんな芸の細かいことであかししてくるなんて、なんという会社なのか。ラテン語の文法を味方につけてでも、あかししたかったのか。もう堂々と、活動しちゃっていいじゃないですか。堂々と、叫べばいいじゃないですか。セフィロスって、クラウドにべた惚れなんだね、と。実際、間違いないわけだから。
Hic veni, da mihi mortem iterum ……さあここに来て、私に再び死を与えよ。
ほら、前の一文がわかると、とってもラブラブ。みなさん、思う存分セフィクラライフを楽しみましょう! なんせ公式ですから! 公式の、お膳立てがあるんですよ〜!
ちなみに、ACで使われているラテン語、ざっと見ましたが、たぶんすごくとっても正しいです。ちゃんとしたところに翻訳を頼んだのだと思います。なぜラテン語なのかはさておき……いや、でも、ある意味古語ですからね、雰囲気は出ますね。死んだとは云わせないけど。とりあえず、この衝撃を伝えたかったので、書きなぐりました。もしかしたらあとあと書きなおすかもしれません。。勢いだけで失礼しました。。
なんでもいいけれど、これのせいでラテン語熱が再発しそうです。ラテン語は、よく云われるほど超絶難解とは思いません。少なくとも、ローマ字です。読めます。冠詞がないだけギリシア語よりましです。どんな言語にも、その言語特有の難しさがあります。日本語は、文法はすごいけど発音は簡単です。英語は、表面的な文法だけなら割合に簡単だけど、奥が深くていつまでたってもわかった気になれません。それに発音がめんどうです。ラテン語とギリシア語は、むやみに難しいというイメージを持たれすぎです。格調高いという地位に祀り上げられてるだけです。近づけば、意外といいひとです。たぶんセフィロスといっしょです(どこがぞ)。