第五章 事件のあと
クラウド熱を上げ、その効果的対処法が考案される
セフィロスとザックスとクラウドは、ふたたび例の保養地のコテージへ戻ってくることができた。捜査局への説明や、教授たちへのお詫びやあれやこれやで、みんなくたくただった。さすがのセフィロスも、少し疲れたような顔をして、クラウドを風呂に入れ、自分も風呂に入ると、その晩はすぐに眠ってしまった。
真夜中に、セフィロスは妙な熱さで目が覚めた。そうして仰天した。クラウドが隣で顔を真っ赤にして、うんうんうなっているのだった。
「クラウド」
セフィロスは慌てて声をかけた。
「どうした。大丈夫か」
クラウドの額は燃えるように熱かった。呼吸は浅く早く、びっしょり汗をかいていた。これまでの疲れが出たにしては、症状が過剰なような気がした。脈が早く、それから間もなくして、せきこみはじめた。セフィロスは必死にクラウドの背中をさすって落ちつかせ、大急ぎで冷えたタオルをこしらえて、クラウドの額に乗せた。それから彼のパジャマを脱がせて身体を拭いてやり、新しいのに取り替えた。そして、大慌てでピエントさんのところに電話をした。夜中の二時半すぎだったが、ピエントさんは電話に出てくれ、クラウドのことを聞きつけるや飛び上がって、すぐに医者を手配してくれた。医者は一時間後に、ピエントさんとその奥さんをともなってやってきた。黒くていちじるしく濃い眉をした、鷲鼻の、六十がらみの男だった。彼はクラウドの胸の音を聞いたり、脈をとったり、口の中を調べたりして、非常に濃い眉をしかめた。
「気管支炎と、軽度の肺炎にかかっとるのは間違いありません。これはいわゆるウィルスによるもので、風邪の重症なやつです。こうなるまでほっといたのはなぜです? それにしても」
濃い眉がぴくぴく動いた。
「この早い脈と、極度の発汗、全身の新陳代謝が不自然に促進されているような症状は、うまいこと説明できませんな……」
セフィロスは、これを聞いてはっとした。思い当たるふしがあった。彼は医者を、クラウドが寝ている寝室ではなく、一階のリビングへ連れて行った。ピエントさんの奥さんが火を入れてくれたので、リビングはいくらか暖まっていた。
「魔晄の影響?」
医者は濃い眉をいちじるしく痙攣させた。
「そうです。おそらくそうでしょう。ちょっと、昼間いろいろありまして」
医者は目をしばたいた。
「そんなら、それはわたしの専門外ですよ! 遺憾ながらね! 気管支炎と肺炎なら受け持てますが、魔晄とは……確かに、ある体質の人間が、そのエネルギーに過剰反応することは医学的にも広く知られています。非常に少数派ですがね。しかし、この分野の研究はいわば、医学の分野からは切り離されているのでして、おわかりでしょう? われわれ一般の医者は、知ることが許されないのです。そうと思われる症例を見たら、首を振り、そして、医者の良心に従って治したいと思ったら……あなたがのところへ連絡を入れる」
「ええ、わかっています」
セフィロスは重々しくうなずいた。
「そして患者は相当な確率で、二度と戻ってこない」
今度は医者が重苦しく首を縦に振った。
「そういうことです。よって、わたしは通常の気管支炎と肺炎治療のための薬を処方しましょう。しかし、薬を飲ませてもいいかどうかの判断はできません。それはあなたに任せますよ。それと、水分補給のために点滴をしなければいけません。とりあえず一本置いていきますが、これではとても足りませんから、明日また来ます。ついでながら、通常あんな患者の往診を頼まれたら、入院沙汰ですよ!」
ひとのいい医者は点滴用の針を差し、大きな生理食塩水のパックを、壁に打ちつけてあったフックを利用してそこへかけた。ピエントさんの奥さんは、自分がかつて看護師をしていたことを医師に打ち明け、点滴の交換くらいならまだできると主張した。医師は、それはたいへんありがたいことだが、明日の朝早くまた来るから、今晩はどうか眠ってくれるように、と奥さんを押しとどめた。最後に、お医者はクラウドに君は若いのだから頑張るようにと云いきかせて、出ていった。クラウドはベッドの上でぜえぜえ云っていた。
「どういうことなんでしょうか?」
ピエントさんが心配そうな顔で訊ねてきた。セフィロスは首を振った。ピエントさんはセフィロスを見て、なにかを察したように何度もうなずいた。
「少し落ちつきましょう。家内がなにか飲み物をくれますよ」
ふたりは一階のリビングへ移動した。ピエントさんの奥さんが、暖かいココアを持ってきた。
「自分の責任です」
セフィロスは絞りだすような声で云った。
「あの子がこういう体質であることは知っていました。クラウドは魔晄エネルギーに、過剰反応してしまう体質なのです」
ピエントさん夫妻は、真剣な顔でセフィロスを見ていた。
「魔晄エネルギーというのは、便利な反面、非常に危険なものでもある。これは、神羅が公表しないようにしているのであまり知られていないことですが事実です。今日、のっぴきならぬ事情があって、魔法を使いました。魔法というのは、たいへん大雑把に云って、魔晄エネルギーを高濃度に凝縮したものと考えてください。それが媒体となって、この星のあらゆる現象に働きかけ、それを引き起こすことができる。魔晄への感度や相性といったものにはいちじるしい個人差があって、純粋に体質の問題です。過剰反応するからといって、別に欠陥というわけではない。一種のアレルギー反応のようなものだと思っていただければいい。これを感じとると、彼の場合、身体がそれを受けつけまいとして必死に抵抗します。その結果、新陳代謝が過度に促進され、高熱が出て、汗をかき、脈拍は早まる。完全にその影響下から逃れられれば体調も回復するでしょうが、どこかが損なわれてしまって、免疫機能がうまく働かなくなれば、もうだめでしょう。クラウドの身体は、いまある種のショック状態にある。おとといからの緊張が重なって、それが解けて風邪を引きかけていたところへ、間近で高濃度の魔晄エネルギーを凝縮するような魔法をぶっぱなしてしまったものだから、彼は……」
ピエントさん夫妻は、なにも云わなかった。ピエント夫人は立ち上がって、太い身体をゆすりながら台所に立ち、消費されずに捨てられたってかまうもんですか、と思いながら、クラウドのための栄養満点のスープを作った。ピエント夫妻は明け方、そろそろと戻っていった。セフィロスはクラウドのそばを離れなかった。彼の手を握りしめ、それに唇を当てて、熱に浮かされているためにクラウドの目じりからこぼれる涙をそっとぬぐってやった。彼は無意識に、何度も謝罪と哀願のことばを口にしていた。
早朝これを知ったザックスは、大慌てでセフィロスのコテージへ駆けこんできた。
「閣下!」
と云ってドアを開け、ベッドに走り寄って、りんごみたいに赤い顔をしたクラウドを見て仰天し、セフィロスになにかできることはないか訊いた。
「特にない」
セフィロスは微笑した。
「この子の若さか、あるいはしぶとさに期待することだ」
ザックスはいたたまれなくなって、ぎゅっと眉をしかめた。そうして友だちの荒々しい呼吸と、そのいかにも苦しそうな寝顔を見、唇を噛み締めた。それからセフィロスを見た。なんでもないように振る舞っているが、彼の神経も相当参っているはずだった。
「……なあ、あんたちょっと休んだら?」
ザックスは云った。
「おれはもうゆうべひと晩ですっかり元気になっちゃったからさ」
セフィロスはザックスを見、首を振った。
「すまないな。だが寝たい気分じゃないんだ」
「なら、いいけどさ」
ザックスはそう云って、壁にもたれかかった。
ゆうべのお医者が点滴スタンドをがらがら云わせながらやってきて、点滴を取り替え、絶対安静のクラウドのためにカテーテルを挿入した。そして点滴の取替えとカテーテルにまつわる諸々の仕事はピエント夫人に引き継がれた。クラウドはときおり激しく咳こみ、目を覚まして、あたりをぼんやり見つめることはできたが、自力で起き上がるのはどうしたって無理だった。彼は自分がどうなっているのかわからないで、ときどきトイレに行きたいとかすれ声で云ったが、すぐにまた眠りこんでしまった。
二日経った。クラウドは相変わらずぜえぜえ云って、高い熱を出してうなっていた。ときどき目を開けて、鼻を鳴らし、なにかから逃れようとするかのようにセフィロスにしがみついた。セフィロスはクラウドの身体を抱きしめながら、肝心なときになんの力にもなれない自分を呪っていた。
その日の午前中にピエント夫人が太った身体をゆすってやってきて、点滴を取り替え、部屋の空気を少し入れ替えながら、小声でセフィロスに……クラウドが眠っていたので……なにげなくこう云った。
「この子、お母さんはいるの? ニブルヘイム? そりゃあ遠いわねえ! ほんと云うと、こういう弱った子どもには、母親が一番の薬なのよ。わたしの息子が大学生で、ひとり暮らしをしていたとき、あの子ったらたちの悪い流感にかかって、ひどい熱を出して寝こんだの。そのとき息子の彼女が……いまの奥さんだけど……わたしに電話してきて、できたら様子を見に来てくださいって云ったのよ。気の利く子なのよ、とっても。それで、わたし出かけていったわ。息子ときたら! ひどい顔して、うなっていたの。でも、わたしがあの子が風邪をひくたんびにやってきたやり方で、湿布をしてあげて、煎じ薬を飲ませて、熱いスープを食べさせたら、みるみるよくなったわ。わたしは看護師をしてたけど、自分の家族には病院の薬を使わせなかったの。結局ね、母親の看病より強力な薬ってないのよ。男の子は特にそうなの。これくらいの、まだ子どもなのに母親と別れ別れで暮らしてる男の子なんて、特にそうだわ」
ピエント夫人はため息をつきながら部屋を出ていった。セフィロスはこのピエント夫人の助言で、クラウドの看病にかまけて大事なことを忘れていたことに気がついた。彼の母親! クラウドのこの状況を、彼女に説明しなくては!
それはセフィロスには気が重いことだった。彼はため息をつき、ぜえぜえ云っているクラウドのそばを離れ、電話をかけるために一階へ降りていった。ちょうどそのとき、ザックスが食料袋を手に抱えてやってきた。彼はシェフの役目を忘れていなかったのだ。
「電話?」
ザックスが陽気な調子で云った。
「ああ、クラウドの母親に」
ザックスはぎょっとした顔で振り返った。
「クラウドの母ちゃん? そっか! おれそんな大事なことも忘れてた! そりゃあ、あんたにだけ任しとくわけいかない。おれもひとこと云わなきゃ。あとで代わってくれる?」
セフィロスは曖昧に微笑んで、受話器を取り上げた。
彼とクラウドの母親とは、実にいわくのある関係だ。息子のことになるとまるっきりばかになってしまうクラウドの母さんは、今年の夏、とうとう我慢できなくなって息子に会いに都会にやってきた。そのとき以来、彼女はしょっちゅう電話をしてきて、クラウドの下着の数や、靴下の穴の空き具合を知りたがる。そういうのを管理しているのはもっぱらセフィロスなので、彼はあるときは直接、また別のときにはクラウドの口を介して、たとえば、チョコボ柄のパンツはもうゴムがゆるくなったとか、空色のハンカチをなくして、もう切らしてしまったとかいうことを母親に報告する。するとクラウドの母さんは、大急ぎでそれを見繕い、郵便屋を脅しあげて、特急で荷物を届けさせるのだ。息子のためなら骨身を惜しまない、いつも明るい、クラウドの母さん。そんなひとの顔を曇らせるような大罪を犯すとは……セフィロスはため息をついた。
電話の呼び出し音が、ひとつひとつ神経に堪えて、拷問のように感じられた。
「もしもし?」
クラウドの母さんが出た。セフィロスは一瞬ことばに詰まった。
「……もしもし?」
それで、こんな間の抜けたことを云ってしまった。でもクラウドの母さんは、「あら、あんたなの?」と明るく云って、けたけた笑った。それがセフィロスの心を余計に重たくした。
「あんたから電話なんて、はじめてじゃない? ちょっと待って、いま椅子持ってくるから……よっこしょっと。いまね、ちょうどクラウドに新しく帽子を編んでるとこなの。ニットの、耳カバーのあるかわいいやつよ。耳あっためるだけで、あったかいでしょ? ところで、あの子元気?」
セフィロスは、もしも生まれつきの強固な自制心がなかったら、泣きだしてしまうところだった。泣き崩れて、こう叫んでしまうところだ……お母さん! わたくしめをお許し下さい!
でも、セフィロスは泣かなかった。そして叫びを上げるよりも、理性的に話をすることの方を選んだ。彼は説明した……これまでのあいだにあったこと、クラウドがその中で果たした役割、そして自分の失態。いつの間にかザックスが台所から出てきていて、そばに立って話を聞いていた。クラウドの母さんは電話の向こうで、長い長いため息をついた。
「……あっそう。そうなの。あんたたち、そんなややこしいことに取りくんでたわけ」
彼女は云った。
「すまない。おれの責任だ」
ザックスが、もう我慢できないといったふうで、代わってくれという身振りをした。セフィロスが迷っていると、ザックスは強引に電話を取り上げてしまった。
「もしもし? クラウドの母ちゃんですか? おれ、ザックスです」
声でわかるわよ、とクラウドの母さんが云った。
「セフィロスだけのせいじゃないんです。おれのせいでもあるんです。おれが気がついて、意地でもあいつのこと外に連れ出してたら……」
「ああーもう! やめてやめて!」
クラウドの母さんが突然叫んだ。
「あのさ。あんたたちの方の電話スピーカーボタンついてる? ついてんなら押して。ふたりに話したいから。ある? 押した? あっそう。あのね。あんたたち、自分がなに云ってんのかわかってんの?」
セフィロスとザックスは顔を見合わせた。
「あんたたちが責任感じるのはそりゃ、勝手よ。実際、ないとも云えないかもね。でもさ、ちょっと考えたらどう? 今回のことで、誰が一番責任感じると思う? クラウドでしょ? 考えたらわかんない? 自分が具合が悪くてさ、ただでさえいろんなひとに迷惑かけてんのに、あんたたちがお通夜みたいな顔して、自分のせいだなんてわめいてたら、そういうの、すごくむかつく。偽善者面してるやつらと紙一重って感じ。自分の責任強調することで、よけいに相手をいたたまれない気持ちにさせんの。いるでしょ? そういうの。次あたしに向かってそんなこと云ったら、鼓膜破れるまで張り飛ばすよ。いい?」
ふたりは黙りこんだ。
「で? あたしのクラウドはどうなの? 死んじゃうの?」
セフィロスはまだわからない、と云った。
「あっそ。じゃ、あたしクラウドに会いに行く。そういう権利はあるわよね? 荷物送っていい? あの子に薬とか下着とか、持ってってあげなきゃ」
「……それなんですけど」
ザックスが云った。
「あのう、いま思いついたんだけど、高いとこ、平気ですか?」
「平気。どっちかっていうと大好きよ。気分いいもんね」
ザックスはセフィロスに目まぜした。
「じゃ、おれ迎えに行きます……空から」
「レーノちゃん、ザックスちゃんよ、げーんき?」
「ああん?」
退屈なデスクワークに就いていたレノは、突然かかってきた電話に眉をしかめた。
「うっせこのタコ。気色悪い声出してんじゃねえぞ、と。働いてもねえくせに、気安く電話してくんなよ、と」
「やーね、つんつんしちゃってもう。ねーえ、ヘリ一台、ちょーっと手配してもらえないかなあ?」
「はあ? テメエ寝ぼけてんのか? おれ様忙しいんだぞ、と。寝言ならテレクラのお姉ちゃんに云えよ、と。じゃあな」
「あらー? いいのかなあ? ザックスちゃんにそんなふうに冷たくしちゃってー。ぼくこないだ、レノちゃんが弐番街を、金髪のきれーなお姉ちゃんと歩いてるとこ見ちゃったんだよなあ。あれ、ラブホ街のあたりだったのよねえ。アンナちゃんに云っていいのかなあ? ぼく、彼女の番号知って……」
「ああーっと、ちょっと待った、ちょっと待った、やだなあ、と。冗談じゃないのよ、と。レノちゃんが、大のお友だちのザックスちゃんのお願い、断るわけないじゃないのお」
「そーよねえ? ぼくたち、友だちだもんねー」
「そそそそ、大親友だもんね、と」
電話を切ったレノは「ちくしょう死ねこのゴンガガ類人猿が!」と叫びながら、自分の仕事を全部相棒に押しつけて、席を立った。一方、受話器の向こうのザックスはにやにや笑い、ピエントさんにチョコボ車を手配してもらうべく電話をかけた。
意気揚々とチョコボ車に乗りこむザックスに、セフィロスは声をかけた。ザックスは陽気に「はいよ」と云って振り返った。
「おまえ、これから先退屈だろう」
ザックスは肩をすくめた。
「まっさか! 閣下のこともあるし」
「いや、退屈になるはずだ。遊び相手は熱にうなされているし、このあたりにおまえが遊び歩くような施設はないし。そこでだ、提案がある」
ザックスはチョコボ車の上でセフィロスに向かって身体をまっすぐにした。
「なんだね、セフィロスくん」
「おまえ、クラウドの母親を連れてくるついでに、彼女も一緒に連れてくるといい」
ザックスは目を丸くした。
「だめだめ、それはだめ。だってあんた……」
「いや、最後まで聞いてくれ」
セフィロスは猛然と抗議しにかかったザックスを押しとどめた。
「そもそも、出だしからおれは不公平だと思っていた。おれは一にも二にも退屈しないが、三人なんて中途半端だし、いざというとき誰が余るかと云ったらおまえだしな。それに、おれはこの上おまえまで沈んでいるのを見るのは耐えられない」
ザックスがもぞもぞ尻を動かした。
「彼女がいれば、少しは気晴らしにならないか? おれが沈んでいるからといっておまえまで一緒になっている必要はないし、もちろん、おまえもクラウドのことは気がかりだろうが、こういうときははじけた方がいいタイプだ、おまえは。そしてその方が、おれの胃と精神にとっても優しい。おれは間違っているだろうか?」
ザックスは眉をしかめ、唇を突き出し、ちょっとのあいだ尻をもぞもぞさせていたが、やがて頭をかきむしって、「ん、もう!」と云った。
「わかったよ! じゃあおれお通夜ごっこから一抜けた! 恨みっこなしよ。おれ、エアリスちゃんと一緒にうんとこ楽しんじゃう。でさ、結局、おれが楽しめば閣下の健康にいいってなもんなのよね。世の中って不思議とそうなんだよな。不謹慎とかさ、不道徳とかって、なんなんだろな!」
セフィロスは目を細めて微笑した。
「大いに疑問だな。どちらかというと、それがあること自体が不謹慎であり、不道徳であったりする」
ザックスはこの逆説に大いににやついた。
「じゃ、おれちょっと行ってくるよ。今日の夜には戻れると思う。あんた、腹減ったら冷蔵庫の中にいろいろあるから食ってよ。ちゃんと食うのよ! おれ帰ってきたらチェックするからね! 昼寝できたらするのよ! 閣下にばっかかまってないで、たまには本読むなり、散歩するなりしなさい」
「はい、お母さん」
セフィロスは厳粛な態度で云った。チョコボ車は走り去った。